「薬だけください」(無診察治療)
「次の診察まで、〇と△の薬だけ足りません。家族が取りに行くので、薬だけ処方してもらえませんか?」
以前処方した薬だし、ご本人の体調も良いようだし、処方して問題はないと思います。
・・・が、医師法第20条「無診察治療等の禁止」に、「医師は、自ら診察しないで処方箋を交付してはならない」と定められています。
つまり「薬だけ下さい」は、医師に「法律違反して下さい」と頼むようなものです。責任を問われるのは、要請した患者さん側ではなく医師側ですので、慎重にならざるを得ません。
一方、医師の診療を規定する決まりには、「医師法」の他に「診療報酬制度」というのがあります。
2010年4月の診療報酬改定の際に、厚労省は「投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであるが、やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤を投与した場合において、再診料は算定できるが、外来管理加算は算定できない」と通知を出したそうです。
医師法と診療報酬制度、矛盾していませんか?
診療報酬制度を優先して問題はないのでしょうか?
また「やむを得ない事情」の判断基準は、はっきりとは決まっていないようです。
「雨が降っているから車イスで連れて行くのは大変」という状況はよく分かりますが、はたして「やむを得ない事情」にあたるのでしょうか。
医師法がどこまで厳密なのか分かりませんが、医師法違反になると困ります。
ですので、当院ではご本人を診察した場合のみ、処方箋をお渡しいたします。
心苦しいのですが、どうぞご理解いただけるよう、お願いいたします。