関節リウマチ治療と妊娠

関節リウマチの治療のゴールドスタンダード金メダル デコメ絵文字メトトレキサート(MTX)だと、以前ブログに書きました。
しかし、MTXは胎児の中枢神経障害、頭蓋骨異常、四肢や口蓋の成長障害をきたすとされ(催奇形性)、妊娠中はMTXで治療はできません
一般に、母体が妊娠中、薬を使わず、放射線も浴びず、病気をしなくても、胎児に奇形が発生する頻度は約3%と言われています。
催奇形性のある薬というのは、奇形の頻度が自然の3%より明らかに高いものを指します。
低用量MTXを週1回投与した場合、妊娠初期の曝露後の先天異常リスクは5~10%と報告されています。

 

MTX内服中の女性が妊娠を希望する場合、MTX投与終了後少なくとも1月経周期は妊娠を避けることとされています。
1月経周期とは、月経の始まりから次の月経開始までのことです。
男性の場合は、投与中及び投与終了後少なくとも3ヵ月間は配偶者の妊娠を避ける必要があります。
ちなみに、乳汁中にもMTXがわずかに検出されますので、授乳中はMTXは禁忌とされています。

 

では、妊娠中には関節リウマチをどのように治療するのでしょうか。

 

通常、少量のステロイド(プレドニゾロン10mg以下)で治療します。
ステロイドにはいくつか種類がありますが、プレドニゾロン胎盤で代謝されやすく大部分が失活するため、胎児への影響が少ないとされています。

 

抗リウマチ薬のサラゾスルファピリジン(商品名アザルフィジンENなど)は、催奇形性がないと言われていますが、添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい」と書かれています。
タクロリムス(商品名プログラフなど)は、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と書かれています。
いずれの場合も、妊娠判明後に継続するかどうかを、十分に話し合って決めます。
どちらの薬剤も「投与中は授乳を避けること」とされています。

 

生物学的製剤(バイオ)は、TNF阻害薬の胎盤、乳汁への移行が確認されており、胎児あるいは乳児に対する安全性は確立されていないため、投与中は妊娠、授乳は回避することが望ましいと言われています。
ただし、セルトリズマブペゴル(シムジア)とエタネルセプト(エンブレル)は胎盤通過性が極めて少ないことが報告されているため、妊娠中に投与されることがあります。

 

 

妊娠後期(妊娠28~39週)には、鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬、NSAIDs)は使えません。
胎児に移行し、プロスタグランディンの産生が阻害されるため胎児動脈管が収縮し、胎児に肺高血圧と右心不全が生じるおそれがあるためです。

 

「動脈管」の画像検索結果