吸入治療による声枯れ

喘息や咳喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの疾患には吸入薬で治療します。
これらの疾患では気道に慢性的な炎症があり、気道内の分泌物により痰が詰まるなど、気道が狭くなっています。
吸入ステロイド薬が、気管支や肺に直接作用することにより、この慢性的な炎症を抑える効果があります。
ステロイド薬については全身の副作用が心配されますが、この吸入ステロイド薬気管支や肺にしか作用しないので長期に使用することができます。
とても効果がある治療なのですが、副作用に声枯れ(嗄声・させい)があり、5~10%程度の頻度で起こります。
嗄声が起こる原因は、ステロイド筋症による声帯筋の運動低下カンジダ症に伴う炎症添加物などの刺激が考えられています。

 

カンジダはカビの一種で、白い斑点ができます。
ステロイド薬の長期連用により、粘膜の免疫力が低下してカビが繁殖しやすい環境になるからです。
これらの副作用が現れないようにするためには、口の中に残った薬を取り除く必要があります。
そのためには、次のようにするとよいでしょう。

 

食事前に吸入する。食事によって口の中の残留薬物を除去できます。
吸入直前に、口の中を湿らせておく。口の中に薬が付着しにくくなります。
吸入後に適量の水で、ガラガラ5秒、クチュクチュ5秒、合計10秒のうがいをします。

 

また、薬剤あるいはデバイスの変更という方法もあります。
以前ブログに書いたエリプタ製剤(レルベアなど)はドライパウダーで、一日一回の吸入で済む、使用方法が簡便などのメリットがあります。
が、粒子径が大きく、嗄声の頻度が高いと言われています。

 

そこで嗄声の副作用でお困りの方には、エアゾール製剤(フルティフォームなど)を検討します。
エアゾール製剤は嗄声の頻度が少なく、粒子径が比較的小さく末梢気道病変に対する有効性が高いというメリットがあります。
しかし一日二回吸入の必要があり、噴霧と吸入の同調が難しい、残量が分かりにくいなどのデメリットがあります。
また添加されているエタノールの臭いや刺激を嫌がる方もいます。